プレスリリース

ルネサスのヘテロジニアスマルチコア搭載車載用SoC「R-Car H3」の性能を最大限に引き出すイーソルのPOSIX仕様準拠スケーラブルRTOS「eMCOS POSIX」をリリース

~自動運転に求められる高度なリアルタイム性と安全性を実現~
~64ビットアーキテクチャのARM Cortex-A57/A53の8コアを、ひとつのRTOSで制御し最大限の活用を可能に~

報道関係者各位 
イーソル株式会社

イーソル株式会社(本社:東京都中野区、代表取締役社長:長谷川 勝敏、以下イーソル)は、ルネサス エレクトロニクス株式会社(以下ルネサス)製車載システム向けSoC「R-Car H3」に、イーソルのPOSIX仕様準拠スケーラブルリアルタイムOS「eMCOS POSIX」が対応したことを発表します。新たに採用した「分散型マイクロカーネルアーキテクチャ」により、R-Car H3に搭載されたARM® Cortex®-A57およびARM® Cortex®-A53からなる、ヘテロジニアスなハードウェア構成の計8コアを、ひとつのリアルタイムOSですべて制御し、性能を最大限に引き出します。高いコンピューティングパワーを必要とする、自動運転システムや先進運転支援システム(ADAS)などで、高度なリアルタイム性と安全性を実現します。

Renesas DevCon Japan 2017」(開催日:2017年4月11日(火)、会場:ザ・プリンス パークタワー東京(東京・赤羽橋))にて、eMCOS POSIXによりハイパーバイザを使わずに、ひとつのRTOSでヘテロジニアスな構成のR-Car H3をサポートする独自技術を解説します。また展示ブースではeMCOS POSIXに加え、開発ツール「eBinder」マルチ・メニーコア環境向けモデルベース並列化ツール「eMBP」のデモ実演を行います。

ルネサスの第3世代「R-Car」のハイエンド製品「R-Car H3」は、自動運転時代の車載コンピューティングプラットフォームとして、従来のR-Car H2からコンピューティング性能を大幅に向上させた車載システム向けSoCです。ARM社の最新の64ビットアーキテクチャを採用した、ARM Cortex-A57クアッドコアプロセッサおよびARM Cortex-A53クアッドコアプロセッサを搭載しています。これにより40,000DMIPS(Dhrystone Million Per Second)以上の処理性能を実現しています。自動運転システムやADASなど、自動車周囲の環境の認知・判断・操作を瞬時に実行することが求められる安全運転支援システムに向け、車載カメラや各種センサから入力される膨大な情報をリアルタイムかつ正確に制御するコンピューティング性能を向上させています。またスマートフォンやクラウドなどとの連携が不可欠となったIoT時代の車載情報システム向けに、外部から入力される大量の情報をリアルタイムかつ正確に処理し、ドライバにリッチな分かりやすいHMIで知らせるコンピューティング性能を強化しています。R-Car H3は自動車向け機能安全規格ISO 26262 ASIL Bに対応しています。

eMCOS POSIXはPOSIX 1003.13 PSE 53に準拠し、マルチプロセス/マルチスレッド、ローダブルプロセス、共有ライブラリを完全サポートした、本格的なPOSIX仕様準拠リアルタイムOSです。Linuxのソフトウェア資産の活用が容易で、自動運転システム用オープンソースソフトウェア(OSS)「Autoware」の動作実績があります。すべての各コアにマイクロカーネルが配置される分散型マイクロカーネルアーキテクチャにより、R-Car H3を含むアーキテクチャの異なるヘテロジニアスなハードウェア構成をサポートするスケーラビリティを実現しています。

またeMCOSは、独自のスケジューリングアルゴリズム「セミプライオリティベーススケジューリング」(特許第5734941号 、5945617号取得)を持っており、リアルタイム性を保証しながら、CPUのスループットを最大限に引き出すことができます。優先度が高いスレッドをコア数分抽出し、指定された各コアを占有して実行するスケジューリングにより、リアルタイム性を保証します。優先度の低いスレッド群が処理量や優先度に応じて残りのコアで負荷分散するスケジューリングにより、スループットを最大限に引き出します。ハードリアルタイム性を必要とする処理には、動作コアを固定する機能もサポートしています。リアルタイム性と高スループットの両立を実現するeMCOSは、ハードリアルタイム性を要する運転支援および自動運転機能と、洗練された直感的なHMIを持つ車載情報システム構築の両方をサポートするR-Car H3のコンセプトに合致しています。

アプリケーション開発には、イーソルのeMCOS専用の開発ツール「eBinder」を利用できます。これには、eMCOSに特化した各種システム解析ツールやユーティリティが含まれています。さらに、モデルベース並列化ツール「eMBP」や豊富な車載システム開発経験から得た技術や知見をバックにするコンサルティングサービスを組み合わせて、R-Car H3向け車載ソフトウェアの設計・開発を強力に支援します。

イーソルは、車載システムやFA・産業機器など、高い安全性と信頼性が求められるユーザシステムの機能安全規格への適合をサポートしています。実績豊富なTRONベースリアルタイムOS「eT-Kernel」は、機能安全規格ISO 26262(自動車)およびIEC 61508(産業機器)の最高レベルの安全度水準を満たしていることが国際的な認証機関である独SGS-TÜV Saar GmbHにより認証されています。また、リアルタイムOS製品の開発プロセスは、医療機器用ソフトウェアの開発と保守に関する安全規格「IEC 62304:2006 Medical device software-Software life cycle processes」に準拠していることが認証されています。


ルネサス エレクトロニクス株式会社 第一ソリューション事業本部 シニアエキスパート 吉田 正康 様のコメント


「リアルタイムOSのトップレベルの技術と知見を持つイーソルのeMCOSが、R-Car H3に対応したことを歓迎します。マルチコアを搭載した複雑なSoCのソフトウェア開発支援を、サポートに定評のあるイーソルから受けられるのは、ユーザにとって大きなメリットになると確信しています。」


イーソル株式会社 常務取締役 上山 伸幸 のコメント


「eMCOSは、実際のデモ走行車に搭載された自動運転システム用OSS「Autoware」への適用実績があり、高い信頼性とリアルタイム性が実証されています。イーソルはルネサスのプラチナパートナーとして、R-Car H3をはじめとするルネサスの各種CPUを使ったシステム開発に、eMCOSをコアとするプラットフォームを提供することで、R-Car H3を使ったシステム開発を包括的にサポートしていきます。」



■補足資料

eMCOSについて

eMCOS(エムコス)は、シングルコアからマルチ・メニーコアプロセッサまでをサポートした商用では世界初の組込みシステム向けスケーラブルリアルタイムOSです。従来のリアルタイムOSとはまったく異なる「分散型マイクロカーネルアーキテクチャ」を採用することで、コア数の違いに加え、マイコンやGPU、FPGAなどアーキテクチャが異なるヘテロジニアスなハードウェア構成をサポートするスケーラビリティを実現しています。さらに、イーソルの独自技術「セミプライオリティベーススケジューリング」(特許 第5734941号、第5945617号)を搭載することで、メニーコアで期待される高いパフォーマンスとスケーラビリティに加えて、組込みシステムに不可欠なリアルタイム性を両立しています。また、シングルコアプロセッサやマルチコアプロセッサと同じプログラミングモデルとインターフェースを利用した、従来の方法でアプリケーションを開発できます。

eMCOS詳細

イーソル株式会社について

イーソルは、革新的なコンピュータテクノロジーで豊かなIoT社会を創造する、1975年創業のリーディング企業です。リアルタイムOS技術を核とするソフトウェアプラットフォーム製品とプロフェッショナルサービスは、厳しい品質基準が求められる車載システムを筆頭に、FA、人工衛星、デジタル家電を含むあらゆる分野で、世界中で採用されています。最先端の自社製品の研究・開発や、主要メーカーや大学機関との共同研究に加え、AUTOSAR、マルチ・メニーコア技術の標準化活動を積極的に進めています

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*記載された社名および製品名は各社の商標または登録商標です。

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