プレスリリース

富士通セミコンダクターの新画像表示LSI「MB86R24」のソフトウェア開発キットに、マルチコアプロセッサ対応リアルタイムOS「eT-Kernel Multi-Core Edition」と開発ツールが標準採用


報道関係者各位
イーソル株式会社


イーソル株式会社(本社:東京都中野区、代表取締役社長:長谷川 勝敏、以下イーソル)は、イーソルが開発・販売を行うマルチコアプロセッサ対応リアルタイムOS「eT-Kernel Multi-Core Edition」開発ツール「eBinder」が、富士通セミコンダクター株式会社が本日発表したデュアルコアARM® Cortex™-A9 MPCore™プロセッサ搭載の車載機器向け画像表示LSI「MB86R24」に対応し、同社が開発・提供するMB86R24向けソフトウェア開発キットに標準採用されたことを発表します。業界最高クラスのグラフィック性能を誇るMB86R24ベースのシステム開発に、車載分野での実績も多数持つeT-Kernel Multi-Core EditionとeBinderを利用することにより、高品位なグラフィックスを表示するクラスターメーターなどの車載表示システムや工業用機器に必要な、高いリアルタイム性と信頼性の確保と、効率的な開発を実現できます。

MB86R24は、デュアルコアARM Cortex-A9 MPCoreプロセッサと、独立した2Dおよび3Dそれぞれの専用グラフィックコントローラが組み合わされた、高性能なアプリケーションプロセッサです。3D用グラフィックコントローラとして採用された、イマジネーションテクノロジーズ社の実績豊富なPowerVR™グラフィックスIPは、独自のタイルベース遅延レンダリング(TBDR)のアーキテクチャにより、優れた性能と低消費電力を実現しています。さらに、6つのビデオ入力、最大3つのディスプレイ出力と高速2D/3D描画機能を持つほか、車載ネットワークであるCAN、USB、Ethernetなどの車載LSIで必要とされるさまざまな周辺インターフェースが1チップに集約されています。

近年の車載情報システムは、車両に取り付けた複数のカメラで撮影した映像をリアルタイムに合成処理して一つの画面に表示する全周囲立体モニタシステム(注1)の搭載や、メータークラスターディスプレイ、センターディスプレイ、ヘッドアップディスプレイなど、車内に搭載される車載ディスプレイシステムの増加、速度や燃料残量といった基本情報に加え、ナビゲーション情報や再生中のオーディオ情報、カメラ映像や各種運転支援情報など、同一ディスプレイで表示される情報量そのものの増加、といった傾向があります。他のシステムと連携しながら、複数の大容量グラフィックスデータの同時処理を行い、高品位の洗練された2Dおよび3Dのグラフィックス表示を行うには、高いリアルタイム性と信頼性が欠かせません。

μITRONの次世代OSであるT-Kernelの性能とアーキテクチャを引き継ぐeT-Kernel Multi-Core Editionは、優れたリアルタイム性と、車載機器をはじめとする様々な採用実績が実証する高い信頼性が特長です。また、イーソル独自の「ブレンドスケジューリング」技術により、MB86R24上で対称型マルチプロセッシング(SMP)と非対称型マルチプロセッシング(AMP)を混在した柔軟なシステム設計ができます。さらにeT-Kernel Multi-Core Editionと緊密に統合されたeBinderが提供する、マルチコア向けソフトウェア開発に有用な豊富なツール・機能を利用することで、高品質なMB86R24向けソフトウェアを効率的に開発できます。eT-Kernel Multi-Core Editionには、POSIX仕様準拠リアルタイムOSを含む、システム規模と用途にあわせた3つのプロファイルがあり、ソフトウェア資産の共通化により効率的な開発ができます。また、ARM Cortex-A9 MPCoreに搭載された、マルチメディア/信号処理アルゴリズムを高速化するARM NEON™ テクノロジー(注2)に対応しています。

eT-Kernel Multi-Core EditionとeBinderは、イーソルのソフトウェアプラットフォーム「eT-Kernel Platform」の主要な構成要素です。このほか、各種ミドルウェア、プロフェッショナルサービスが含まれます。富士通グループのFujitsu Semiconductor Embedded Solutions Austria製3D対応HMI開発ツール「CGI Studio」は、eT-Kernelプラットフォームで動作実績があります。今後、市場のニーズに応じ、MB86R24向けソフトウェア開発キットやCGI Studioと統合して動作する、各種ドライバを含むランタイム製品の開発を予定しています。



富士通セミコンダクター株式会社 アドバンストプロダクト事業本部 映像ソリューション事業部部長 脇本 康裕 様 のコメント
「イーソルのリアルタイムOSと開発環境は、MB86R24の前モデルであるMB86R11、MB86R12でも実績があり、安定した動作と優れたリアルタイム性に定評があります。さらに今回の、ARM Cortex-A9 MPCoreデュアルコアプロセッサを採用したMB86R24を利用するシステム開発向けには、イーソルが持つマルチコアシステム開発の先進的な技術とノウハウに非常に期待しています。MB86R24を利用する高品位なグラフィックス表示システムの品質の確保と開発の効率化を進めるために、今後もイーソルとのパートナーシップを継続していきます。」

イーソル株式会社 執行役員 エンベデッドプロダクツ事業部長 上倉 洋明 のコメント
「車載表示システムは、今後ますます進化が進み、複数のマルチメディアデータの同時処理や、他システムとの連携、高品位な3Dグラフィック表示など、CPUとリアルタイムOSを中心とするソフトウェアプラットフォームに高い性能と品質が求められると考えられます。eT-KernelとMB86R24の前モデルのMB86R1xは、国内外の全周囲立体モニタシステムで多数の採用実績があり、その性能と品質は実証されています。これらの経験と実績をベースに、リアルタイム性と信頼性を持つeT-Kernelに加え、マルチコアシステム開発の技術とノウハウを組み合わせ、富士通セミコンダクターとの連携のもと、MB86R24ベースのシステム開発者を包括的に支援します。」


注1) 全周囲立体モニタシステム:株式会社富士通研究所が開発した、運転手の視界補助向けに車両全周囲を任意の視点でリアルタイムに表示する映像処理技術。

注2) ARM NEON テクノロジー:ARM Cortex-Aシリーズのプロセッサに対応する128ビットSIMD(Single Instruction, Multiple Data)アーキテクチャ拡張機能。ビデオ・エンコード/デコード、2D/3Dグラフィックス、オーディオ/ボイス/スピーチ処理、画像処理などのマルチメディア/信号処理アルゴリズムを高速化する。


■ 補足資料

eT-Kernelについて

eT-Kernelは、リアルタイムOSベンダーであるイーソルがこれまでµITRONで培ってきたノウハウと技術をもとにして、T-Engineフォーラムが配布するオープンソースのT-Kernelに性能面・機能面で改良・拡張を加えたT-Kernelの拡張版です。システムの高速起動を可能にする「高速ブート」、複数ファイルシステムの透過アクセスを可能にする論理ファイルシステム(LFS)、システム稼動中の問題解析を支援する「例外マネージャ」などの多くの拡張機能を実装しています。マルチコア対応版「eT-Kernel Multi-Core Edition」では、独自のスケジューリング技術「ブレンドスケジューリング」により、ひとつのシステム内でSMP型プログラムとAMP型プログラムを混在させられるほか、システム保護技術「メモリパーティショニング」により、マルチコアシステムの信頼性と品質確保を支援します。eT-Kernelには、さまざまなシステム規模と用途をカバーするスケーラブルな3つのプロファイルがあります。µITRONと近い構成を持つµITRONからの移行に最適な「eT-Kernel/Compact」、メモリ保護機能とプロセスモデルをサポートする大規模開発に最適な「eT-Kernel/Extended」、およびPOSIXに準拠した「eT-Kernel/POSIX」です。それぞれのプロファイル上で構築したソフトウェアを共通化したプロダクトライン型ソフトウェア開発も容易です。eT-Kernel/POSIXは仕様で規定されているほとんどの900個を超えるPOSIX APIを実装しており、UNIXプログラミングでよく利用されるfork、pthread、signalなどの機能も含みます。このため、LinuxなどのUNIX系OSの市販/オープンソースの豊富なソフトウェア資産に加え、国内外のUNIX系エンジニアリソースを容易に活用できます。またeT-Kernel/POSIX上で、T-Kernelベースのアプリケーションも同時に動作させることができます。

eT-Kernel詳細

eBinderについて

eBinderは、T-Kernel、μITRONをコアとするシステム向けの開発スイートです。従来のT-Kernel/μITRONソフトウェア開発に不足していた、優れた開発環境を提供します。リアルタイムOSを使ったシステム開発のためにゼロから設計された開発ツール・機能群を使うことで、リアルタイムシステム特有の問題を容易に解決でき、リアルタイムOSを最大限に活用できます。eBinderは、C/C++コンパイラを含む各種開発ツール群と、あらゆる組込みソフトウェアのベースとなるターゲットプラットフォームを構成するモジュール群があわせて提供されます。

eBinder詳細

eT-Kernel Platformについて

eT-Kernelプラットフォームは、イーソルのコア技術を注入したリアルタイムOSをベースとするソフトウェアプラットフォームです。eT-Kernelプラットフォームにより、ソフトウェア共通化によるコスト削減および開発期間短縮と、システムの信頼性確保を支援します。マルチコアプロセッサもサポートするT-Kernel拡張版「eT-Kernel」とμITRON4.0仕様準拠「PrKERNELv4」を中心に、開発ツール「eBinder」、ネットワーク/ファイルシステム/USB/グラフィックスなどの豊富なミドルウェアに加え、製品サポートや受託開発などを含むプロフェッショナルサービスで構成されています。動作検証があらかじめ済んでいるので、チューニングやカスタマイズなどの必要なく、すぐに動作します。ソフトウェアだけでなく、ニーズに合わせたプロフェッショナルサービスをあわせてご提供することで、開発者がアプリケーション開発に専念できる環境を作ります。eT-Kernelプラットフォームは、カーナビやデジタル家電に加え、航空・宇宙分野、FA機器、OA機器など幅広い分野で多くの採用実績があります。

eT-Kernel Platform詳細

イーソル株式会社について

イーソル株式会社は「Inside Solution」をブランドスローガンに、1975年の創業以来、組込みソフトウェア業界、および流通・物流業界で実績を重ねて参りました。ユビキタス社会を内側から支える技術者集団として、お客様の満足を第一に、開発、販売からサポートまで一貫したサービス、そしてトータルソリューションを提供しております。弊社は創業直後より30年以上にわたって、高信頼かつ高性能の組込みOS・開発環境・各種ミドルウェアを自社開発、販売し、デジタルカメラなどの情報家電製品から車載情報機器や人工衛星システムにいたるまで、数多くの組込みシステムに採用いただいています。日本市場のみならず、北米、ヨーロッパ、アジア市場向けに製品・サービスの販売活動を広げています。さらに、顧客様のシステムに特化した組込みアプリケーション開発やコンサルテーションも創業時より行っており、これら様々な規模のシステム開発実績による技術とノウハウの蓄積を背景としたサービスは、多くの顧客企業様より高いご信頼をいただいております。また、組込み技術の応用市場としての流通・物流業界においても、指定伝票発行用車載プリンタ、耐環境ハンディターミナル、冷凍庫ハンディターミナルなどの製品企画および販売を行い、高い評価をいただいております。

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