2012年11月13日
イーソル株式会社

イーソル、早稲田大学と共同で 「OSCARコンパイラ」 を用いたマルチコアプロセッサ向けプログラム並列化支援サービスに向けた共同研究を開始


イーソル株式会社 (本社:東京都中野区、代表取締役社長:澤田 勉、以下イーソル) は、早稲田大学が研究開発を行っている 「早稲田OSCAR並列化コンパイラ」 (以下、OSCARコンパイラ) を用いたマルチコアプロセッサ向けプログラム並列化支援サービスに向けた共同研究を開始することについて、早稲田大学と合意したことを発表します。イーソルは、マルチコアプロセッサ向けリアルタイムOSおよび開発ツールの開発・販売を通じて蓄積してきたマルチコアシステム開発の技術とノウハウを活用しながら、マルチコアプロセッサ向けのプログラム並列化を総合的に支援します。

早稲田大学 理工学術院の笠原博徳教授のグループが研究開発を行っている OSCARコンパイラは、C言語または Fortran で作成された逐次プログラムから、ソフトウェア標準 「OSCAR API 2.0」 (以下、OSCAR API) で記述された高速・低消費電力動作を可能にする並列プログラムを自動生成します。OSCARコンパイラの利用により、設計や開発・デバッグの複雑さを課題とするマルチコアプロセッサ向けソフトウェア開発のコストと期間を大幅に削減できます。情報家電や車載制御機器、医療機器などの組込み機器からスーパーコンピュータまで幅広く使われる、各種マルチコア、メニーコア、共有メモリ型マルチプロセッサを対象としています。その高い並列化技術により、3コアが搭載されたルネサス エレクトロニクス社製 「EC-4260 (NaviEngine(R)-MID)」 とイーソル製マルチコアプロセッサ対応リアルタイムOS 「eT-Kernel Multi-Core Edition」 の環境で評価用並列プログラムを実行した際、1コアで実行したときと比べて、プロセッサコア数の等倍に近い、2.9倍高速化したことが確認されています。さらに、OSCAR API に用意されているハードウェアの利用電力を直接制御できる API を使うことにより、低消費電力化を実現できます。OSCARコンパイラは、マルチプラットフォーム化されているため、さまざまなメーカーやアーキテクチャのマルチコア/メニーコアプロセッサとOSに対応しています。このためプロセッサやOSを変更しても、容易にソフトウェアを再利用できます。

イーソルは、早稲田大学グリーン・コンピューティング・システム研究機構アドバンストマルチコアプロセッサ研究所の招聘研究員として、同研究所内に設置されたマルチコア・メニーコア・アーキテクチャ・アプリケーションAPI委員会で進められた OSCAR API 2.0 の策定に参画しました。イーソルは、対象マルチコアシステムのOSの種別を問わず、OSCARコンパイラを活用した、マルチコアシステム最適化のコンサルテーションや、並列化の受託開発などを含む総合的な支援サービスの提供に向けて、早稲田大学との共同研究を進めます。ニーズに合わせて、eT-Kernel Multi-Core Edition と専用の開発ツール 「eBinder」 を組み合わせたソリューションも提案します。

 

早稲田大学 理工学術院 情報理工学科 教授 笠原 博徳 様のコメント
「世界で初めて、組込みからサーバまでの様々なマルチコア/メニーコアプラットフォーム上で、高速化と低消費電力化の実証に成功した並列ソフトウェア標準 「OSCAR API」 は、ソフトウェア生産性・信頼性・処理性能の向上並びに低消費電力化をコンパイラと協調して実現できる仕様となっています。現在、この仕様の世界標準化を目指した評価・普及活動が進められており、詳細仕様は早稲田大学より無料配布されています。その並列化プログラムを自動生成する OSCARコンパイラを用いた並列化支援サービス提供で、イーソルと共同で取り組めることを心強く感じています。イーソルのもつ、マルチコアOSベンダーとしてのマルチコアシステムの高い技術と知識に期待しています。」

オリンパス株式会社 研究開発センター 映像技術開発本部 ソフトウェア技術グループ
グループリーダー 工学博士 中野 恵一 様のコメント

「マルチコア/メニーコアプロセッサは、高機能化と低消費電力化の要求がますます高まる組込みシステムでも、採用が進むことが見込まれています。しかしコア数が多くなると、ソフトウェア開発の設計が複雑になり、難易度が上がるのが課題です。優れた並列化プログラムを自動生成する OSCARコンパイラは、マルチコア/メニーコアシステムの質と開発効率を飛躍的に向上させられると、産業界で実用化が期待されています。弊社は、医療機器をはじめとする製品でマルチコア/メニーコアプロセッサの採用を検討しているところですが、イーソルがコミットを強めることにより、OSCARコンパイラの実用化が加速することを歓迎します。」

イーソル株式会社 執行役員 ソフトウェア技術統括責任者 兼 技術本部長 権藤 正樹 のコメント
「世界最先端の並列化技術が搭載された OSCARコンパイラは、ますます進化するマルチコア/メニーコアプロセッサを使う実際の製品システム開発現場で望まれている、有用なツールです。イーソルは、マルチコア対応リアルタイムOSベンダーとしての強みを生かして、OSCARコンパイラを用いた包括的な並列化支援サービスに向けた共同研究を早稲田大学と実施することにより、マルチコアソフトウェア開発者のさらなる支援の強化を図っていきます。今後もイーソルは、産学官連携を積極的に進め、その最新技術と研究成果をイーソルの製品・サービスに還元しながら、組込みソフトウェア開発の進化に寄与していきます。」


<補足資料>

■ eT-Kernel Multi-Core Edition について
eT-Kernel Multi-Core Edition は、マルチコアプロセッサを使う組込みシステムのためのSMP型リアルタイムOSです。独自の 「ブレンドスケジューリング」 技術により、ひとつのシステム内で、SMP型/AMP型が混ざった複数個のプログラムを混在させることができます。これにより開発者は、シングルコアプロセッサ利用時の資産やノウハウのそのまま再利用しながら、マルチコアプロセッサの性能を最大限に生かしたプログラムを開発することができます。「Single Processor Mode(SPM)」 と 「True SMP Mode(TSM)」 をベースとする4つのスケジューリングモードを用意しています。プログラムによって適切なモードを選択することで、高いスループットの実現などのSMP型プログラムのメリットと、リアルタイム性の確実な保証やソフトウェア資産の再利用性といったAMP型プログラムが持つメリットの、両方をひとつのシステム内で実現できます。

「eT-Kernel Multi-Core Edition」 詳細



■ eBinder について
eBinder は、T-Kernel、μITRON をコアとするシステム向けの開発スイートです。従来の T-Kernel / μITRONソフトウェア開発に不足していた、優れた開発環境を提供します。リアルタイム OS を使ったシステム開発のためにゼロから設計された開発ツール・機能群を使うことで、リアルタイムシステム特有の問題を容易に解決でき、リアルタイム OS を最大限に活用できます。eBinder は、C/C++ コンパイラを含む各種開発ツール群と、あらゆる組込みソフトウェアのベースとなるターゲットプラットフォームを構成するモジュール群があわせて提供されます。

「eBinder」 詳細



■ イーソル株式会社について
イーソル株式会社は 「Inside Solution」 をブランドスローガンに、1975年の創業以来、組込みソフトウェア業界、および流通・物流業界で実績を重ねて参りました。ユビキタス社会を内側から支える技術者集団として、お客様の満足を第一に、開発、販売からサポートまで一貫したサービス、そしてトータルソリューションを提供しております。弊社は創業直後より30年以上にわたって、高信頼かつ高性能の組込みOS・開発環境・各種ミドルウェアを自社開発、販売し、デジタルカメラなどの情報家電製品から車載情報機器や人工衛星システムにいたるまで、数多くの組込みシステムに採用いただいています。さらに、顧客様のシステムに特化した組込みアプリケーション開発やコンサルテーションも創業時より行っており、これら様々な規模のシステム開発実績による技術とノウハウの蓄積を背景としたサービスは、多くの顧客企業様より高いご信頼をいただいております。また、組込み技術の応用市場としての流通・物流業界においても、指定伝票発行用車載プリンタ、耐環境ハンディターミナル、冷凍庫ハンディターミナルなどの製品企画および販売を行い、高い評価をいただいております。

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