バイオテクノロジー技術をささえるeT-Kernel Linux からの移行で開発効率とシステム信頼性を向上

プレシジョン・システム・サイエンス株式会社様



左から今回インタビューに協力して頂いた田中様と石坂様。続いてSX-8G Compactの核酸抽出操作のソフトとGUI開発を担当した羽田野様、狩長様。PSS全体のソフトウェア環境標準化を率いた依田様。SX-8G Compactを背景に。


お話を伺った方

ユニバーサル・バイオ・リサーチ株式会社 プレシジョン・システム・サイエンス株式会社
PSSグループ(企画開発担当)技術部 技術本部 設計第一部 ソフトウェア・グループ
マネージャ マネージャ
石坂 崇雄 様 (左から二番目) 岩本 幸俊 様
   
ユニバーサル・バイオ・リサーチ株式会社 プレシジョン・システム・サイエンス株式会社
開発第一部 部長 業務本部 IR・社長室 マネージャ
羽田野 智之 様 (左から三番目) 田中 英樹 様 (左から一番目)


たとえば警察のDNA鑑定や新型インフルエンザの感染検査。プレシジョン・システム・サイエンス株式会社(PSS)が世界中にOEM(相手先ブランド製造)供給した自動化装置が活躍するほんの一場面です。血液や細胞などから目当ての遺伝子を確実に取り出すPSSの抽出・精製技術は、バイオテクノロジー分野の研究開発が最も進んでいる欧米市場を中心に、世界中で高い評価を得ています。PSSは、同社が特許をもつその抽出・精製技術「Magtration® Technology」を核に、研究・医療現場向けに、遺伝子検査の自動化装置を開発、供給しています。





バイオテクノロジーの研究・医療現場向けの自動化装置は、少量生産ながらそのニーズは専門的で多岐にわたります。また、コストダウン要求の高まりはこの市場も例外ではありません。PSSは、同社の独自技術を注入した装置の「箱」、つまりハードウェア上に、個別のニーズを満たすアプリケーションを開発し、自動化装置を完成させます。その開発過程において、いかにソフトウェアを短期で開発し、低コスト化をはかるかが同社の課題でした。


そこで、さまざまなアプリケーションで共通して利用できるソフトウェア環境の標準化に乗り出したのですが、その根幹となるOSとして採用したのが、イーソルのT-Kernel拡張版「eT-Kernel」です。eT-Kernelに加え、ファイルシステムやUSBスタック、TCP/IPプロトコルスタックなどのミドルウェア、そしてプロフェッショナルサービスが統合化された「eT-Kernelプラットフォーム」を、ソフトウェアプラットフォームとして採用しました。



OS選定のポイントは信頼性と品質


アプリケーション層下のソフトウェアプラットフォームの構築を主導した石坂様は、OS選定に当たっての条件を次のように言います。「人の命にかかわる医療現場に近いところで使われるPSSの自動化装置には、誤作動や故障は許されません。そのため、OSの信頼性や品質の確かさは重要なポイントでした」。さらに、イーソルのeT-Kernelを選択した理由について、「イーソルは、比較検討した複数の組込みOSベンダの中でも老舗の企業で、eT-Kernelは数多くの実績があったのが高評価でした」と言います。選定の最終段階では、これまでPSSが利用してきたLinuxとeT-Kernelが候補に残りました。慣れ親しんだLinuxではなく、eT-Kernelを選択した理由について、岩本様は次のように言います。「Linuxを利用していたときには、原因不明のハングアップがよく起こりました。そういう場合はソースコードにprint文を埋め、出力されるログをにらみながら、100個、200個といったレベルで積み重なっている問題をひとつひとつ、根気強くつぶし、ようやく動く、という状況でした。そのため、開発ツールが整い、構造がシンプルなeT-Kernelに期待しました」。


Linux使用時の30%の開発期間で試作品を完成


では、eT-KernelはPSSの期待に応えられたのでしょうか。eT-Kernelを実際に利用した石坂様は「Linux使用時の30%程度の開発期間で試作品を完成できました」と言います。「信頼性、品質といった点は期待通りで、『組み込むとすぐに動く』のはよかったです。OSまわりに手をわずらわされず、アプリケーション開発に注力できました」。2006年の採用以来、eT-Kernelをコアとするソフトウェアプラットフォームは、製品化されたものと試作品をあわせて8~9機種に展開されています。石坂様によると、試作品レベルのソフトウェアの開発期間は、アプリケーションにもよりますが、一人のエンジニアが取り組んで、最短で1、2週間でできるものも、数ヶ月かかるものもあるそうです。


一方、eT-Kernelの性能や機能について岩本様は、「eT-Kernelのリアルタイム性能は圧倒的に優れています」と言います。ただし「Linuxと比べてサンプルが少ないので、使いこなすまでに少し時間がかかりました」とeT-Kernelの課題を挙げました。サンプルプログラムの拡充やすでにあるサンプルの公開については、今後イーソルが改善すべき課題です。また、eT-Kernelを利用した感想について、「OSまわりでほとんどトラブルはなかったのですが、あった場合でもeT-Kernelは構造がシンプルなので、自力で問題を解決できました。直感的に操作できる開発ツールeBinderが役に立ちました」と岩本様は続けます。もっとも、岩本様の、「付属のマニュアルをはじめ、トロンやT-Kernel関連書籍を片っ端から読み込んだ」というプロフェッショナルな尽力が背景にあることを付け加えておきます。


ガンの早期診断、治療に貢献するeT-Kernel


今秋にリリースを控える「SX-8G-Compact」(8連小容量全自動核酸抽出装置)は、eT-Kernelベースのソフトウェアプラットフォームを搭載したPSSの最新自動化装置です。石坂様が「液晶を利用したFlash PlayerベースのGUIの作りこみに力を入れ、他の装置とちがって1年の開発期間をかけた」というSX-8G-Compactは、世界の最先端を行くベルギーの試薬メーカー、ダイアジェノード社による採用が決まっています。同社の広報・IRマネージャである田中様は、「この装置は、将来のガンの早期診断や老化、肥満予防などにつながる、画期的な研究用途に使われます」と説明します。「同じ遺伝子を持つはずの双子が、必ずしも同じ病気にかかるわけではありません。これまでの研究結果から、遺伝子がもつ、『スイッチ』のオンとオフの様子で、病気になるかどうかが決まるようだ、ということが分かってきました」。たとえば、ガン患者の遺伝子を調べると、スイッチのオンとオフがぐちゃぐちゃに混ざっていると言います。このスイッチのオン・オフの関係を研究することは重要なテーマとなっています。研究結果が臨床現場で実用化されるまでに通常10年ほどかかるそうですが、さらに研究を深め、将来、田中様が言う「天気予報並みに」、有用な診断が早期にできるようになれば、ガンもこわくない病気になるかもしれません。「そのころには、今恐れられている病気に対する世の中の考え方は確実に変わっていると思います」と田中様は言います。

SX-8G-Compact   Flash PlayerベースのGUI

最後に、今後の同社の自動化装置開発において、引き続きeT-Kernelを利用していきたいかどうかをたずねると、石坂様は「もちろん確約はできませんが」という前置きのもと、「信頼して使えるeT-Kernel採用の意義は、私たちにとって大きなものでした。今後も、できる限り長く、利用したいと考えています」と答えました。eT-Kernelは、もうしばらくこの先も、PSSの優れた独自技術を支える文字通りのプラットフォームとして、バイオテクノロジーの発展に貢献できそうです。


ユーザープロフィール

プレシジョン・システム・サイエンス株式会社

バイオ産業における臨床検査分野の発展に寄与するトータル・システム・インテグレータ。1985年設立。遺伝子関連業界における新技術の開発をはじめ、その実用化に用いられるDNA自動抽出装置など、幅広いシステムの開発および製造販売を手がける。

ユーザ商品

SX-8G- Compact(8連小容量全自動核酸抽出装置)をはじめとする8~9機種(試作品含む)


採用製品

     


採用事例一覧